『二重結婚者』 ■■■

監督:アイダ・ルピノ

陰影を強調した映像ではないものの、神経症的な主人公、回想シーンの多用、中華レストランのダークな空間などフィルムノワールの香りが強い作品だ。アイダ・ルピノはいわゆるファム・ファタール的な役割を担っている女性だが、男を破滅させる悪女というよりはむしろメロドラマのヒロインといった方が良く、それだけに善良な妻を演じるジョーン・フォンテインがかなり損な役回りになっている感は否めない(さては監督の陰謀か?笑)。不倫の逢瀬を重ねるエドモンド・オブライエンとアイダ・ルピノが別れる場所はルピノが下宿している屋敷の階段であり、それは二度繰り返され、三度目にオブライエンが階段を上ってしまった時、悲劇の到来を決定的なものにする言葉がルピノから発せられる。やはりフィルムノワールにおける階段は不安の象徴であり不吉な場所なのである。オブライエンとルピノが出逢うことになるバスのビバリーヒルズ・ツアーのシーンではジェームズ・スチュアートバーバラ・スタンウィックエドモンド・グエンの豪邸が実際に映し出されるのが興味深い。

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盤質。ボケボケの画ですが、我慢できないほど酷いというわけでもありません。ただラストシーンの一部で豪快なコマ落ちがあるのはかなり残念(エドモンド・オブライエンが突然消える!^^;)。