『恋文』 ■■■□

監督:田中絹代

見事なメロドラマ。大女優は監督としても第一級だった。森雅之が駅で久我美子と再会するシーンの回想への入り方や、公園で別れるシーンのフィックス長廻し(背景のモヤが良い!)など随所に魅せる演出があるし、森雅之が住むボロ・アパートやすずらん商店街のセットの雰囲気も素晴らしい。スター女優の初監督作品だけあって出演している俳優も実に豪華だ。最も印象的だったのは古本屋の娘を演じる香川京子。彼女がズボン棚の間から顔だけ出して微笑むシーンは明らかに『おかあさん』*1の再現だろう。あまりの可愛らしさに萌え死ぬかと思った。やはり香川京子最強である。ちなみに脚本を書いているのは木下恵介成瀬巳喜男が協力しているらしい)で、自身も写真屋の役でカメオ出演している。

*1:田中絹代香川京子はこの作品で母娘を演じている