『闇の曲り角』 ■■■

監督:ヘンリー・ハサウェイ

脚本、演出、キャメラいずれも非の打ち所がない見事な職人技が堪能できる1946年製作のフィルムノワールだが、50年代の作品に顕著な陰鬱さや複雑さといった要素はまだ発現しておらず、そういう意味ではフィルムノワールというよりヒッチコック的な娯楽犯罪サスペンスといった方が良いのかもしれない。主演女優のルシル・ボールは主人公の良きパートナーであり、ノワール的な暗さや悲劇性とは無縁の正統派ヒロインだ。ただ深い陰影が支配する室内シーンには濃厚なフィルムノワールの香りが漂っている。ところでヘンリー・ハサウェイの映画の魅力の一つに端役が妙に良いというのがある。本作にも不気味な長身の刑事、新聞売りの少年、映画館の受付嬢、アパートの階段でいつも笛を吹いている少女、牛乳配達のオヤジなど印象深い端役が沢山出てくる。