『赤い手裏剣』 ■■■□
監督:田中徳三
ウェスタン風味が強烈に効いた時代劇で、プロットはほとんど『用心棒』だが、本家にも引けを取らない面白い映画だった。スタジオ・システム時代の大映製作の娯楽時代劇には良質な作品が無数にある*1が、その中でも本作は大当たりの部類に入るのではないか。キャメラは『用心棒』と同じ宮川一夫。夜間シーンやローアングルや細部の色彩感覚、夜とも昼ともつかぬ奇妙な時間が現出するススキが原での殺陣シーンなど実に美しく格好良かった。それと宿場に跋扈する三親分の一人を演じる須賀不二男が馬で逃走を図り、南原宏治に背後から"投げ鎌"で首を切られて落馬するシーンのロングショットも印象的。カット割りのリズムで「あっ首が飛ぶ!」と思ったが、見事にすかされた。製作されたのがマカロニ・ウェスタン全盛期だったら首が飛んで派手に血しぶきが上がったに違いない。