『結婚行進曲』 ■■■

監督:市川崑

『淑女は何を忘れたか』のようなセックスウォー・コメディだが、こちらの方があらゆる点で俗っぽい。登場人物、特に女性たちが物凄い早口でまくしたてるのが特徴で、中でも杉葉子のそれは狂気とさえ言ってよく、音の悪さも手伝ってまともに聞き取ることができたセリフはほとんどなかった。役柄といい『ヒズ・ガール・フライデー』のロザリンド・ラッセルをイメージしていたのかもしれないが、個人的には単にイライラしただけだった(笑)。上原謙が映画館に『めし』を見に行き、連れの杉葉子に「あの男優は誰だい?」と訊くお茶目なシーン*1がある(その直後に二人が並んで道を歩く成瀬巳喜男的なショットも出てくる)。ラストには瞠目。このシーンは同時代の優れたハリウッド・ロマンスコメディにも匹敵する洗練された演出と画面造形があると思う。

*1:『めし』成瀬巳喜男)の主演は上原謙原節子で、『結婚行進曲』と同じ1951年公開の作品