『女性に関する十二章』 ■■□

監督:市川崑

初期の市川作品は後期の審美主義的な映像重視の作りとは違って、和田夏十の脚本がかなり大きなウェイトを占めているようだ。本作もセリフの面白さや、役者の丁々発止のやりとりを楽しむ、いわゆるヴァーバル・コメディになっている。異色なのは原作者の伊藤整本人がナレーションを担当し、原作の解説や恋愛論、さらに出演者へのツッコミ、はては出演者とキャメラ越しに会話までしてしまう演出で、50年代にここまで大胆なお遊びをやっている邦画コメディというのは他になかったんじゃないだろうか。ちなみにこの作品にもオネエ言葉を喋るナヨナヨした男が出てくる。