『青春怪談』 ■■■

監督：市川崑

和製スクリューボール・コメディの佳作。クマのような体躯（失礼）に少女のような心を持った未亡人を演じる轟夕起子のコメディエンヌっぷりが素晴らしい。男女がひっくり返ったような北原三枝と三橋達也（村上弘明に見えて仕方なかった）のカップルもなかなかに珍妙だ。老けメイクで謎めいた老女中を怪演している北林谷栄（撮影当時は40代前半）、レズビアンの芦川いづみ、カメオというより単なる端役で登場する『生きる』の小田切みきなど、とにかく出演者が印象に残る作品だった。ちなみに阿部豊が監督した新東宝版の『青春怪談』（市川崑のは日活）もあって、面白いことに同じ日に公開されている*1。こういう形での競作って珍しいような。

君美わしく―戦後日本映画女優讃 (文春文庫)

*1:「日本映画データベース」参照