『こころ』 ■■■■
監督:市川崑
市川崑の映画的センスはコメディではなくメロドラマの時にその真価が発揮される、と言ったらファンに怒られるだろうか。それにしても見事な映画だ。ラストシーンが蛇足なのと、尺が短すぎる(180分くらいあった方がいい)点をのぞけば本当に最高だった。50年代日本映画の豊饒さ。画面の艶が違う。森雅之、新珠三千代、三橋達也という配役も完璧で、本作を見た後では他の配役など考えられない。とりわけ新珠三千代の輝きがものすごく、クローズアップの美しさはもはや神話の域に達していると言っていいだろう。そんなわけで現時点での私的邦画史上最高の美女は新珠三千代ということになりそうだ。まったくもって信じ難い美しさである。