『眠狂四郎悪女狩り』 ■■■

監督:池広一夫

シリーズ最終作。池広一夫らしいケレン味たっぷりだが下品ではない演出が冴え渡る好篇。雷蔵の顔を型どったマスクに頭巾をかぶったニセ狂四郎の異容、能様式による契りの儀式の夢魔的で淫靡なシークエンス、ラストの紅葉する森の中での美しい決闘シーンなど見所十分。毒殺を得意とする冷酷淫乱な大奥の実力者・錦小路を演じる久保菜穂子が艶っぽい。あと藤村志保の臨終の演技にうっとり。最後の殺陣は円月殺法×円月殺法という『無頼剣』と同じシチューションだが、『無頼剣』は場所を屋根瓦の上に設定することで、「絶対受身」の剣法同士という不毛な対決に決着を付けさせたが、本作では円月殺法の特徴である「妖しい光」を、隠れキリシタンであるニセ狂四郎が十字架の光に錯覚することで斬り込んでしまうという何とも都合の良い、しかし実にスマートな演出になっている。「(あの世の神を)俺も確かめてみたいものだ」とセリフを残して去っていく狂四郎。この半年後に市川雷蔵は死んだ。