『アパルーサの決闘』 ■■■

監督:エド・ハリス

渋い役者は撮る映画も渋い。肩肘張るどころか、ベテラン職人監督のような安定感のある演出。ディーン・セムラーキャメラもすこぶる良好。エド・ハリスヴィゴ・モーテンセンのコンビも最高だ。50年代西部劇を想起させる影のあるキャラクター造型が、友情を超えたホモ・セクシャル的な微妙な関係性をそこはかとなく感じさせてスリリングである。二人の間に介入するレニー・ゼルウィガーの存在も良い。西部劇のヒロインは教師タイプか娼婦タイプというのが定番だが、本作では教師タイプとして登場し、やがて娼婦タイプになるという屈折した造型になっているのが面白かった。彼女は、その洗練されているとは言えない容姿や佇まいによって、明らかに正統的な西部劇ヒロインとはかけ離れた存在なのである。そしてそれは取りも直さず、この作品がエド・ハリスヴィゴ・モーテンセンの物語であることを如実に現しているのだ。劇場の大画面で見てこその映画だと思うが、いぶし銀の西部劇ということで当然ながら未公開。ああ、もったいない、ふがいない、なさけない!・・・それにしてもラストシーンにはシビれたねえ。某アニメの「カッコイイとはこういうことさ」というキャッチコピーが頭に浮かんでしまったよ。

アパルーサの決闘 特別版 [DVD]

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