『箱の中の女 処女いけにえ』 ■■■

監督:小沼勝

アダルトビデオに対抗するため企画された「にっかつロマンX」レーベル第一弾。ブラックユーモアの効いた少女監禁陵辱調教モノで、犯人夫婦が新宿駅前に車を止めて淫らにカーセックス(車窓がマジックミラーになっていて中から通行人が丸見えという過激な演出)を行うシーンから始まる。残念なのは、本作がビデオ素材からフィルムに焼くキネコ方式で撮られた作品でありながら、DVDはキネコ版ではなくビデオ素材をそのままマスターにしているために映像の質感がテレビのようにノッペリした感じ(皮肉にもアダルトビデオのような)になってしまっていること。キネコ版を見た人の話によると、初期キネコ方式の粗い質感が、退廃的で異常極まりない性犯罪劇にマッチして独特の映像世界を生み出していたらしい。つまりDVDでは本作の魅力が半減してしまっているのだ。青味がかった薄暗い地下トンネルと地下水道を木築沙絵子が全裸で逃走するシーンや箱詰めされた木築沙絵子が海岸の砂浜に晒されるシュールなシーンなどは是非劇場で見てみたいものだ。あと、捕まった犯人の男が取調べ室で卑猥な供述をして刑事が欲情してしまう描写に、山本直樹の短編エロマンガ「夏の思い出」はこれからのイタダキだったのかと妙な部分で感動してしまう。なお、この作品に関しては松島利行著『日活ロマンポルノ全史』を参照されたい。短い記述ながらも撮影の裏話など興味深いことが書かれている。中田秀夫が助監督として最初の本格的な現場についた作品であったことも蛇足ながら付け加えておこう。