『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』 ■■■

監督:田中登

宮下順子のヘンタイ有閑マダムは素晴らしくエロかったし、森勝のキャメラも良いのだが、どうせならスコプトフィリア(覗見症)の主題、見られる快楽と見る欲望にとことん耽溺していく男女の歪んだ性愛の関係性だけで一本丸々やって欲しかった(原作からの逸脱などお構いなしに!)。天井の穴から覗く眼の存在に気が付いたときの宮下順子の目のクローズショット。シングルソファーの内部(どうみても人間が入れるスペースなどない)でマダムへの一途な愛を唱える運転手の男は観客総ツッコミの迷場面だろう。こういうデタラメさは嫌いじゃないけど。ラストショットの解放感も良い。悪夢のような退廃的世界から生還できるのは無垢な魂をもつ小間使いの少女だけなのであった。