この日は池袋にある新・文芸座のオールナイトに行く。「ヴェンダース・ナイト」。上映作品は『ベルリン・天使の詩』、『パリ、テキサス』、『さすらい』の三本。観客数はキャパ266席の半分が埋まる程度(ちなみに男女比は9:1ぐらい?笑)。夜10時半から朝の6時半までという長丁場なので、最後の『さすらい』だけは寝ずに観る!との決意で臨む。が、いざ始まると、そんな思いはどこへやら、前の二作を夢中になってコンプリート鑑賞。結果『さすらい』は所々意識がなくなるハメに(泣)。生理現象には逆らえません(とほほ)。でも『ベルリン・天使の詩』、良かったぁ。分断され疲弊した街ベルリンとペーター・ハントケの詩と静寂の映像美が、人間の孤独、そして温もりへの渇望を強烈に浮き彫りにする。赤い血と一杯のホットコーヒーで実感する"生きる"ということの素晴らしさ。家で観た時とは明らかに質の違う感動が味わえて大満足だった。『パリ、テキサス』はプリントの状態がいまひとつだったけれど、作品はもちろん最高。クライマックスの覗き部屋。あまりにも濃密で緊張感に満ちたハリー・ディーン・スタントンナスターシャ・キンスキーのやりとり。ジェーンが「トレイラー・・・」と呟くところのアップショットには間違いなく映画の神が降臨していますね。本当に凄すぎ。『さすらい』も中盤から後半にかけて意識が飛び飛びだったとは言え、お気に入りのサイドカーの場面はきちんと拝めたので、まあ良しとしておくべし。いつかまた、どこかで単独上映されたら観に行こう。劇場の闇とスクリーンの光に包まれた8時間。外に出たときの、疲れきった体に触れる、冷たい朝の空気が何とも気持ち良かったです。たまにはオールナイトも良いもんだ。