『家宝』

監督:マノエル・デ・オリヴェイラ

硬質で重厚な演出と、瑞々しい映像が何の違和感もなく融合してしまうオリヴェイラの映画は、ただ眺めているだけでも心が弾んでくる。北ポルトガル・ドウロ河流域の丘陵や古い街並みを捉えたロングショット(小津的な枕ショット!)、薄暗い室内に差し込む光(闇に沈む調度品や人物達が神秘的な趣を漂わす!)、絵画のような構図と人物配置(厳格と秩序!)、領主が使用人たちから祝福を受ける場面ではアンゲロプロスばりの鮮やかな長廻しを見せてくれる。3人の女性の秘めたる心が、静かに激しく交錯しながら緩やかに悲劇的な結末へと向う。翻弄されるだけの男たち。最後に微笑んだのは・・・。人形のような愛くるしさの中に得体の知れない魔性を隠し持った女カミーラを演じるレオノール・バルダックの素晴らしさ、貫禄の美しさで魅せるレオノール・シルヴェイラ、2人の女性の間に位置し、静かに行く末を見守る老女イザベル・ルトの存在感。女性への畏敬と畏怖の念を感じさせるオリヴェイラ老熟の女性崇拝映画。94歳の作品。感嘆と溜息。

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盤質。『ノン、あるいは支配の虚しい栄光』と同じくらい素晴らしい画質です。こちらも上下左右に黒味が入るノートリミングのスクイーズ。ヨーロピアン・ビスタのDVD化としては理想的と言えます。