『暗黒への転落』

監督:ニコラス・レイ

暗澹たる気持ちにさせられる法廷映画。物語の構成がとにかく巧い。被告人の過去が冗長に感じられるほど事細かく、しつこく描かれていく。しかし、その遠回りが、後半の法廷シーンでとてつもなく劇的な瞬間を生み出す布石になっている。見事なタイミングで入ってくるアップショット、その力強さ!そして何よりも"汗"の演出が素晴らしい。犯罪の源泉は劣悪な環境にあり、その環境を作った社会にこそ責任がある、というボガートの怒りの言葉が印象に残る。49年、暗い時代の暗い映画。