『生きる』

監督:黒澤明

極端にカリカチュアライズされた人物が織り成す、後半の通夜シーンが抜群に面白い。十人十色の人間模様が、ユーモラスに、ときに辛辣な皮肉も交えながらテンポよく展開されていく。ひときわ異彩を放つのが左ト全。セリフは少ないけれど、その存在感は絶大。本物の酒が入っているとしか思えない演技には脱帽(笑)。大胆な構成、映像の力強さ、あまりにも過剰な演出。黒澤映画は病人が主人公の人間ドラマでも、動物性タンパクのように濃厚でガツンとくる味わいがある。伊藤雄之助の異相、甘味物をがっつく小田切みきのパワフルな笑顔(ギョロリ剥いた目!)も忘れ難い。

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盤質。フィルム傷が目立ちますが、総じて良質な黒白映像です。高コントラストでメリハリがあります。音は可もなく不可もなくといった感じでしょうか。例によってセリフは聞き辛いです。特に左ト全はほとんど何を言ってるのか分かりません(泣)。志村喬も呟くように喋るので聞き取り難いです。