『素晴らしき日曜日』

監督:黒澤明

中盤以降の饒舌すぎる脚本と湿度の高い演出がどうにもあざとく感じられてしまった。戦争直後の作品だけに、頑張れニッポン!という監督の想いはひしひしと伝わってくるのだけれど、それが個としての作品の寿命を短くしていることは否めない。そんなにリキまなくても、と思ってしまう。でも、その抑えのきかない激烈な精神こそが黒澤明黒澤明たる所以なのだし・・・。どうしたって可愛らしい小品にはなりっこない。やっぱり肉食人種なんだ(笑)。主役のカップルが小雨降る上野公園を走り抜けるシーンが印象に残る。ロケ・シーンが思ったよりも少ないのが残念。どうせならデ・シーカの『自転車泥棒』みたいにオール・ロケで戦後の風俗や風景を徹底的に見せて欲しかったなあ。