16日、有楽町の東京国際フォーラムテオ・アンゲロプロス監督の『霧の中の風景』を観に行ってきました。相変わらず時間ギリギリの会場到着で、館内に入ったときには既にスクリーンではCMが上映中、客の入りは満員盛況で、私は目出度く床に敷かれたペラペラの座布団に坐っての鑑賞と相成ったのでした(し、尻が・・・泣)。アンゲロプロス作品の劇場体験は今回が初めて、フィルムの状態はお世辞にも良いとは言えないものでしたが、映画はもちろん素晴らしかったです。旅芸人の一座が吹きすさぶ風の中から現れるロング・ショット、雪降る空を見上げる静止した人々の間を駆け抜けていく姉弟、犯される少女をオフショットで捉えた戦慄の長廻し、一座が浜辺で『旅芸人の記録』の歴史的事象を劇のセリフとして語る360度パンの長廻し、水中から出てくる巨大な手の彫像、そして深い寓意を感じさせる感動的なラスト。ドライアイスのような鋭さと瑞々しい詩情を併せ持った、緊張と弛緩の世界がアンゲロプロスの映像の魅力ですね。静謐のロードムービー