『浜辺の女』

監督:ジャン・ルノワール

海難事故というトラウマを抱えた青年士官が、浜辺で出会った美しい若妻をめぐって、夫である盲目で初老の元・画家と激しく争うという何とも不条理感漂う三角関係を描いた不気味な小品。70分チョイの尺なので、話の展開がかなり強引だけれど、その強引さが本作の味にもなっている。浜辺の難破船の中で、士官と若妻がいきなりキスするシーンや、ボートで沖に出た士官と老画家が突然いがみ合いだすシーンなど、唐突で劇的な演出が異常な愛憎劇を盛り上げていく。家の炎上によって登場人物たちの心が浄化(?)されるラストも相当な力技なのに、なぜか妙に納得させられてしまうのだから不思議だ。ファム・ファタールな若妻を演じるジョーン・ベネットがとにかく魅力的。