『私の好きなモノすべて』

監督:マルティン・シュリーク

初お目見えのスロヴァキア映画。現況を変える(恋人と旅立つ)のか、それとも変えない(親と息子の元に残る)のか。バツイチ子持ちで無職の男の葛藤を静かに淡々と描いた人間ドラマ。細かく章立てされたシークエンス、哲学者の語り、スタンダード・サイズ、ショットの繊細な美しさ、映画史への目配せ(主人公がTVで『キートン将軍』を観る場面もある)等々、ゴダールの影響を強く受けている作家のように感じられた。映像の雰囲気というか空気感が妙に心地良い。音楽も良いし、ヒロインのジーナ・ベルマンがこれまた最高。ナスターシャ・キンスキーをちょっとゴツくしたような感じ(笑)。