『童年往事/時の流れ』

監督:侯孝賢

素晴らしいホームドラマ。やはり、ふとしたショットから"小津的"な世界が滲み出てくる。日本様式の家屋やどこか懐かしい鄙びた町並み、日本映画のポスター、日本刀。これら日本統治時代の残滓ともいうべきものが、人々の生活の中に溶け込んでいる風景。何とも複雑な親近感が湧いてくる。町の広場の空間演出も見事で、時折、軍隊と思しき馬や車が猛烈な勢いで通り過ぎていくのが、本作の牧歌的で穏やかな雰囲気を一瞬不安にさせる鮮やかな動のアクセントになっている。また、外省人本省人に分かれた少年たちの対立は、エドワード・ヤンの『クーリンチェ少年殺人事件』と同様、台湾社会が抱える灰色の問題を浮き彫りにする。この作品も多くの小津作品がそうであるように、人が徐々にいなくなっていく映画である。父、母、祖母、それを見送る子供たち。家の前にある大きな樹木が印象に残った。まるで生と死の循環を象徴しているかのように屹立している。

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盤質。並でしょうか。解像度は良いのですが、S/N、発色は今ひとつな感じ。シュートや白点ノイズの目立ちは『恋恋風塵』と同じくらいですが、本DVDはそれに画面ブレも加わっています。これがちょっと気になったかも。ちなみに日本語字幕は『恋恋風塵』よりも面白いミスが散見されました(笑)。