『こうのとり、たちずさんで』

監督:テオ・アンゲロプロス

「国境」という存在の不条理性を、難民や人種差別や国家や個人といった様々な角度から見つめることによって浮き彫りにしていく残酷な寓話。深刻なテーマを扱った硬派な作品ですが、「待合室」と呼ばれる難民隔離区画の魅力的な空間造形、失踪した政治家の捜索や政治家の謎めいた言葉と行動といったサスペンス的要素、一人の少女をめぐる緊迫した関係など、映像的にも物語的にも面白味は十分で見応えがあります。しかし、何と言っても圧巻なのは、川を挟んでの結婚式に尽きるでしょう。こんな物凄いロングショットの長廻しを見せられたらゴメンなさいと言うしかありません(笑)。このスペクタキュラーな映像演出こそアンゲロプロスの真骨頂ですね。最後のショットも美しすぎます。こうなるともう映像のメタファー云々とか言ってる場合じゃないです。ただただ感動。

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盤質。『蜂の旅人』同様、解像度は十分なんですが、ややノイジーでシュートが目立ちます。