『赤ちゃん教育』

監督:ハワード・ホークス

常軌を逸したテンションで繰り出される荒唐無稽で支離滅裂なギャグとユーモア。"テンポが良い"なんて生半可な表現では済まされない会話と展開の異様なスピード感にはたじたじ。でも真に驚くべきは、これだけ過激で濃い笑いなのに、まったく下品でもしつこくもなく、むしろ洗練されたスマートな味わいを感じさせさえするという点にあります。そして、その雰囲気を醸成しているのが、主演のケーリー・グラントなんですよね。恐るべきトラブル・メーカーであるキャサリン・ヘップバーン(素晴らしい横顔!)に翻弄され続けながら、川本三郎氏が言うところの"無垢と余裕のサプライズ・ルック"で状況を切り抜けていく彼の颯爽としたクールな三枚目っぷりが、本作をクドさや臭みとは無縁のコメディにしているのだと思います。ラストの表情とセリフなんて本当に絶品でしたね〜。