『父/パードレ・パドローネ』

監督:タヴィアーニ兄弟

子が父権への従属から自立へと至る過程を、教育という視点から描いた素朴で力強いホームドラマ。厳しくて閉鎖的な土地の風土的な情感が色濃く滲み出てくるような生々しい映像の質感が素晴らしい。寒々しいロングショットの凄み。如何にもタヴィアーニ兄弟らしいと感じさせるのは、深刻であると同時に滑稽でもある大らかな作風で、とりわけ子供たちの獣姦から大人たちの性交に繋がっていくシークエンスのコミカルな卑猥さは痛快だった(笑)。文盲である主人公が、羊飼いになる為の激しい教育で研ぎ澄まされた耳を獲得し、それによって音楽に目覚め、やがて音声学に興味を持ち、遂には言語学者になってしまう展開の妙。教育というものの不確実性と困難の本質を鋭くユーモラスに突いた作品だと思う。"父性の体現者"オメロ・アントヌッティの演技と存在感は、彼の額以上に見事な光彩を放っていた(笑)。ナンニ・モレッティが後半にちょっとだけ顔を見せる。

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盤質。解像度、S/N、発色、いずれも良くありません。フィルム傷もかなり目立ちますね。この作品は、元になるフィルム素材の状態がすでに良くないのかもしれません。それと、日本語字幕の表示されないセリフが数箇所あったのも気になりました。意図的なものなのか、単なるミスなのか・・・。