『緋文字』 ■■■

監督:ヴィム・ヴェンダース

「物語」を巧みに「物語る」ことができなかったヴェンダースの愛すべき失敗作。アメリ東海岸ピューリタンの村が舞台でありながら、まるで西部劇のような斜面や丘や空の捉え方、村の空間造形が何とも魅力的で、広大な浜辺と奥まった入江というコントラストの効いたロケーションも素晴らしいです。室内ではある重要なシーンで、ラングのフィルムノワールを彷彿とさせる表現主義的なホラー演出が使われていたりもします。あとは何と言ってもイエラ・ロットレンダーでしょう。ピューリタンの村で一人赤い服をまとってしまう少女。緋文字の赤と共に強烈な視覚的アクセントになっています。リュディガー・フォーグラーとのやり取りがまた良いんですよね。「あの"A"は何だい?」「アッメーリカー!」(笑)。大好きなシーンです。後に『都会のアリス』で、20年後には『時の翼にのって』で再び再会することになる感動的なツーショット。ゼンタ・ベルガーの硬質な美しさも忘れ難い。

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盤質。画質は良好。ただ先日、日記に書いた通りヨーロッパ・ビスタで収録されていないのが残念。