『ルイジアナ物語』 ■■■■

監督:ロバート・フラハティ

フラハティの遺作。ジャームッシュの『ダウン・バイ・ロー』に強い影響を与えた作品です。少年の漕ぐ小舟が沼沢地帯を緩やかに滑り、様々な生き物たちが映し出されていく非常に詩的で美しいオープニング。そこへ突如轟音と水しぶきを上げながら現われる機械。石油会社がスポンサーとなって製作された本作は、いわゆる自然と文明の共生がテーマで、現地人と掘削工事作業員との温かい交流を描いているかなり"胡散臭い"話ではあるのですが、映像があまりにも素晴らしくて、そんなことはどうでも良いや!という気になっちゃいます(笑)。原生の大自然と巨大な石油掘削機。この異様なコントラスト。掘削作業シーンの重量感のある荒々しい描写と音響の迫力には圧倒されます(石油噴出事故のシーンも凄いスペクタクル)。その様子を眺める少年の、興奮と不安が入り混じったような何とも複雑な表情。一方ではのどかな魚釣りや穏やかな自然の詩情豊かな描写、ワニの捕獲といったスリル&サスペンスが緩急自在に描かれていきます。フラハティは「ドキュメンタリーの父」と言われている人ですが、この作品を観ると実に巧みな映像演出によって物語を語ることのできる映画作家であったことがよく分かります。しかし、何と言っても魅力的なのは映像そのものの美しさであり力強さであって、テーマや物語性はあくまでも二の次三の次の要素でしかないんですよね。やはりフラハティはドキュメンタリスト以外の何者でもなかったと言うことでしょうか。

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盤質。さすがにHVEのDVDは質が高いですね。鮮度の高い黒白映像。音も良好。特典は短篇ドキュメンタリー『The Land』(約20分)の他に4種類のメイキング映像が収録された充実の内容でした。