『ジャンヌ・ダルク裁判』 ■■■■

監督:ロベール・ブレッソン

共同体としての宗教が個の信仰を踏みにじる。いや〜男用の囚人服をまとったフロランス・カレのわずかに露出した生足の存在感は只事ではありませんねぇ。聖職者が皆すべからく彼女の足元に視線を向けてしまうのは、そこに女性性があまりにも無防備に曝け出されているからに他なりません。審問中のジャンヌが青年の聖職者と視線を合わせると、そこには否応なくある種の官能性が漂います。そして番兵は牢獄の壁に開いた覗き穴から聖女であるジャンヌを視姦するんですね。淀長さんならずとも怖いですね〜いやらしいですね〜と言いたくなります(笑)。ちなみに本作にはジャンヌの他にも数人の女性が登場しますが、すべて背後から捉えられていて顔は映し出されません。女性としての存在を完全に示し得ているのは唯一ジャンヌだけなんですね。この映画は宗教寓話であり、裁判ドキュメンタリーであり、何よりもエロティックな視線の人間劇だったのです。