『大自然の凱歌』 ■■■■

監督:ハワード・ホークスウィリアム・ワイラー

森林伐採と木の河流しの爽快とも言えるスペクタクルな映像から、豪快で痛快な酒場シークエンスへと繋がっていく前半部はまさにホークスならではの躍動する映画的興奮に満ちています。フランシス・ファーマーが"オーラ・リー"(「ラブ・ミー・テンダー」はこの曲のカバー)を歌うシーンの美しいアップショット、ウォルター・ブレナンの身体的アクションの素晴らしさ。しかし後半はガラリと変わり、父と息子が一人の女(フランシス・ファーマーの二役)をめぐって対立する倒錯的な三角関係のメロドラマが描かれます。動から静のドラマになることで、登場人物たちの動きも前半の荒々しさとは打って変わって内面的な葛藤、すなわち精神的アクションへと移行していき、それが落ち着きのある画面を形作るのです。と言ってもそこはやはりホークスで、ウォルター・ブレナンアコーディオンを弾くジャムセッションの幸福感溢れるシーン(寄り添い歌う男女4人にゆっくり近づいていくキャメラ)や、ジョエル・マックリーとフランシス・ファーマーが飴を伸ばしながら親密になっていくシーンなど、決して感傷的になりすぎることなく、カラッと明るい演出を随所に挟むところが良いんですよね。それだけにワイラーが担当したという最後の場面の深刻さはやや唐突で違和感を覚えるのですが、陰影の濃い映像とエドワード・アーノルドの迫力ある演技は見応えがあります。ちなみに監督がホークスとワイラーならキャメラグレッグ・トーランドとルドルフ・マテという豪華なコンビ。