『黄色いリボン』 ■■■■

監督:ジョン・フォード

若き二人の士官の成長とジョーン・ドルーをめぐる恋の鞘当て、それを時に厳しく、時に優しく、時にユーモラスに見守るジョン・ウェインの父性的な人物造形、そして去りゆく老兵としての悲哀。アル中軍曹をコミカルに演じるビクター・マクラグレンも見事な存在感を示す。これはもう文句なしに面白い人間ドラマ。しかし本作最大の魅力は、騎兵隊の行軍シーンであると私的には断言したいです。"ソルジャー・ブルー"の制服に身を包んで整然と隊列を組む騎兵隊の格好良さ、起伏に富んだ丘を豪快に進む幌馬車の雄姿(荷物が落ちようがお構いなし!)、ベン・ジョンソンの華麗な乗馬術、モニュメント・バレーの雄大な景観と青い空、この人馬と自然が一体となって生み出す映像スペクタクルこそ西部劇の醍醐味ですね。ちょろちょろと走り回って画面に可愛らしいアクセントを添える犬たちの存在も印象に残りました。餞別の純銀時計を贈られたジョン・ウェインが、バツが悪そうに胸元から老眼鏡を取り出し、時計に刻まれた献辞を読む時の表情と所作は、劇中で最も微笑ましく感動的なシーンだと思います。その後、ビクター・マクラグレンが巻き起こす酒場での乱闘騒ぎがまた良いんですよ。フォード作品における殴り合いは幸福を呼ぶ愉快な儀式なんですね。