『ジェリー』 ■■■

監督:ガス・ヴァン・サント

誇張と誤解を承知の上で本作を新世紀の西部劇であると断言してみる。「荒野の道」を彷徨する二人のジェリー、マット・デイモンケイシー・アフレックはあてのない旅路の果てにソルトレイクへと辿り着き、ジョン・ウェインのような歩き方で歩きながら美しくも不気味な朝を迎える(ここの長廻しは圧巻)。また"人が歩く"というアクションを映画的なイメージとして特権化させる試みはヴェンダースに通じるものがある。終盤、布で顔を覆ったマット・デイモンが取る意外な行為、最後の車中、デイモンから目を背ける子供とバックミラーに映る父親の冷たい眼差しは一体何を意味するのだろうか。脳裏をよぎるのは米国とアラブの関係、そして9.11だ。アルヴォ・ペルトの音楽も素晴らしい。