『ピクニック』 ■■■■■

v-erice2005-09-27


監督:ジョシュア・ローガン

これはメロドラマの大傑作だ!一人の男(あるいは男の逞しい上半身)が女所帯の凡庸な生活に大きな波風を起こし、たった一夜の激しく濃密な恋の狂騒曲を奏でる。その主な舞台となる労働祭のシークエンスがとにかく素晴らしい。昼下がりの賑やかな喧騒と詩情溢れる川辺のピクニック風景、静寂と叙情が支配する夕暮れ時、闇夜を照らす中国風ランタンは何の変哲もない船着場をロマンティックな非日常的空間へと変貌させる(キム・ノヴァクが「ムーン・グロウ」のメロディーとともにゆっくり踊りながら階段を降りてくるショットの息を呑むような映画的瞬間!)。こうして着実に作り上げられた祝祭の空間はしかし突然呆気なく崩壊する。その引き金となるロザリンド・ラッセル(絶品なり)の暴走っぷりがスゴイ。過剰な演出と劇的な変化こそメロドラマの醍醐味なのだ。スーザン・ストラスバーグ(彼女は悲劇的なヒロインであり、私的には最も印象に残るキャラだったりする)、ベティ・フィールド、エリザベス・ウィルソン、アーサー・オコンネルなど脇を固める俳優たちも実に鮮やかな存在感を見せる。類型的な人物造形だからこそ俳優の個性が際立つのだ。ウィリアム・ホールデンキム・ノヴァクもそれほど好きではないのだけれど、作品としては文句なしに最高。魅力的な細部は厖大でとても語り尽くせない。もう間違いなくオールタイムベストの一本。

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盤質。解像度と発色はなかなか良好なんですが、S/Nが悪く、画面はかなりノイジー。2時間近い作品ですが、一層収録なのでビットレートが低く(平均3.78)、それが画質に影響しているようです。