『MAN IN THE SADDLE』 ■■■□

監督:アンドレ・ド・トス

牧場主同士の抗争という西部劇ではありきたりな題材ながら、その主因が1人の女性(ジョーン・レスリー)を巡ってのものであるという点がユニークです。エレン・ドリュー演じるランドルフ・スコットに密かな想いを寄せるカウガールの存在も良いんですよね。この二人が見事な連携プレーで危機を脱するシーンの痛快さといい、ジョーン・レスリーの過激な行動力といい、男よりも女が逞しい西部劇だと言えます。それは冒頭、長身のランドルフ・スコットがジョーン・レスリーを見上げながら(彼は下り階段にいるのだ)会話するというシーンでも象徴的に示されています。陰影や斜面を強調した画面造形、真っ暗闇でのガンファイト、ふいに挿入されるユーモア、画面を活性化させる些細なアクションの数々。大量生産されたB級西部劇の中にもこうした豊かな細部に溢れた作品が存在し、そこにはアンドレ・ド・トスという刻印が鮮やかに刻まれているのです。クライマックスの大砂塵も素晴らしいし、終わり方も実に粋。日本未公開というのが信じられないほど面白い映画でした。

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盤質。画質中程度。例によってリージョン1表記のALL仕様です。日本語字幕付き。