『四十挺の拳銃』 ■■■■

監督:サミュエル・フラー

さすがサム・フラー!80分だからこその高密度なドラマ構成、大胆かつ繊細な演出の数々はこれぞまさに映画の生きた教科書と言ってしまいたくなるほどに鮮やかです。冒頭のバーバラ・スタンウィック率いる40騎のガンマンがなだらかな丘を猛然と駆け抜けていくシーンからシビレまくり。全編に溢れる"黒"が普通の西部劇とは明らかに違う倒錯的な雰囲気を醸し出しています。それは仰角と俯瞰とクローズアップを多用したサスペンス描写、ホラーまがいのショック描写(効果音が秀逸)、年増の女牧場主を中心に据えた複雑怪奇な嘘と裏切りの愛憎劇といった要素もしかりです。とにかくショット主義的な徹底した画面造形へのこだわりが素晴らしいんですよね(銃口の中から女を覗く007みたいなユニークなショットもある)。長めのディゾルブによってシークエンスが繋がれているのも特徴です。また圧巻と言えば竜巻の突発的スペクタクル。凄まじい風と黒い砂塵が吹き荒れる(その過剰さは黒澤映画が可愛く思えるほど)中、無数に転がるタンブルウィードとともにバーバラ・スタンウィックが馬に引きづられる異様な光景には思わず唖然。最後の陰惨な対決シーンから甘い歌声をバックにこれぞ西部劇と言わんばかりの、しかしあまりにも取ってつけたようなハッピーエンド、いやはや、まったく出鱈目で最高!(笑)。そうそう、桶風呂が沢山置かれた共同浴場のシーンも実に良いんですよね。本作は「黒い西部劇」ですが、バーバラ・スタンウィックが乗る白馬、彼女が最後に着る白い服、ウェディング・ドレス、そして石鹸の泡など印象に残る"白"もささやかながら存在します。ニコラス・レイの『大砂塵』とともに50年代西部劇の極め付けの一本でしょう。

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盤質。画質は良好。鮮度の高い黒白映像です。オリジナルのシネスコ版と、最初と最後だけシネスコになるスタンダード版が収録された両面仕様になっています。英語字幕あり。リージョン1です。