『リオ・グランデの砦』 ■■■■□

監督:ジョン・フォード

砦に帰還した騎兵隊を出迎える子供たちや妻たちの描写の何と美しいこと!影の落ち方、見事な構図、人々の表情、もうこの冒頭部分だけで涙が出そうになります。軍隊という共同体の家族的な絆と本当の家族愛が同時に、フォードならではの温かさとユーモアと詩情によって描かれていく西部劇。『黄色いリボン』がジョン・ウェインの映画だとすれば、本作はモーリン・オハラの映画だと言っても良いかもしれません。初登場時の視線の演技、オルゴールを見つめる時のクローズアップ(極端なシャロウフォーカスになるのが印象的)、川原での洗濯やアイロン掛けの所作、ラストの感動的な身振り、逞しさの中に溢れんばかりの愛と優しさ、そして可愛らしさを秘めた女優モーリン・オハラこそフォード映画最高のヒロインですね。『駅馬車』の戦闘シーンに匹敵するスピード感とスリル感に満ちたアクション繋ぎも素晴らしいです(ベン・ジョンソンが鮮やかな操馬術で追撃してくるインディアンを撃退するシーンの格好良さ!)。他にもコーラスグループ「サンズ・オブ・パイオニアーズ」を始め様々な歌が兵士によって唄われる音楽映画の一面があったり、布製の低い山型の天井がユニークな空間造形と人物配置を生み出す「幕舎」の存在や、教会の篭城戦における少女の微笑ましい活躍などとにかく見所盛り沢山。『黄色いリボン』同様、愛すべき副官を豪快に演じるビクター・マクラグレンも絶品。名前は分かりませんがアイパッチをしたキザな士官も忘れ難いです。