『機動戦士ＺガンダムⅢ 星の鼓動は愛』

立川シネマシティ２にて。

結局「新訳Ｚ」って新作画によるメカ描写や戦闘シーンの演出を楽しむだけの、良くも悪くも「ファンのためのお祭り企画」に過ぎなかったのかなぁというのが三部作観終わっての率直な感想です。『星を継ぐ者』を観た時大いに膨らんだ二部、三部への期待は見事なまでの尻すぼみに終わったのでした。そもそも「Ｚ」は真のニュータイプの素養を持ったカミーユという少年が戦争と人間のエゴによって発狂してしまう悲劇の物語だと思っているので、今回の新訳の新訳たる証としての「健やかな」ラストは当然の帰結なのだろうと思いつつもやはり違和感を覚えます（とは言え主要キャラが次々と死んでいくことに変わりはなく、物語の展開が圧縮されている分、全体的にはむしろ凄惨な印象さえ受けるのですが）。それと「Ｚ」はカミーユの能力に新たな時代の可能性を見出したシャア・アズナブルという理想主義者（ニュータイプになれなかったオールドタイプ）がその希望の存在であるカミーユを失い、挫折し、絶望へといたる物語（それが地球への隕石落としという暴走へと繋がっていく）でもあるので、発狂しないカミーユ、シャアがちょいワケありの過去を持つエース・パイロットでしかない「新訳Ｚ」が『逆襲のシャア』に繋がっていくという流れは相当に無理があるというか、ほとんど破綻しているといっても過言ではないのです。その意味でも『逆襲のシャア』への重要な伏線の一つだったダカールの演説がカットされている（つまりアムロとシャアが乾杯をする1stファン感涙の名シーンがないのだ！）のは残念でした。子供に殴られて涙を流し、格下に苦戦し、女たちに翻弄され、挙句にはベンチで頭を抱えてしまう、このひたすらカッコ悪いシャア・アズナブルであってこその「Ｚ」だと思っている自分にとって、シャアというキャラクターの存在感が戦闘シーン以外あまりにも希薄な「新訳Ｚ」は単なる悪訳でしかありません。あるいは中途半端な活躍に終わったハマーン・カーンとの抗争〜シャアが決起するまでを描いた続編を作る企画があるのでしょうか。エンディングを観る限りではやる気満々に感じられましたが、はてさてどうなることやら。個人的には観てみたいし、作るべきだとも思います。いずれにせよ「ＺＺ」は黒歴史確定。DVDは買うのかって？ええ勿論買いますとも(笑)。三部作をぶっ通し視聴して最後の審判を下すつもりです。