『恋のエチュード』 ■■■■

監督:フランソワ・トリュフォー

突然炎のごとく』と同じアンリ・ピエール・ロシェ原作の映画化で、本作は二人の女と一人の男の物語。個人的にはこちらの方が断然好きだ。やはりジャン・ピエール・レオーの存在が大きい。女優では妹ミュリエル役のステイシー・テンデターが印象に残った。熱情を内に秘める(それが肉体の変調となって突発的に表面化するショック描写が良い)弱視ピューリタンの女性を見事に演じていて、奔放で常に男をリードするトリュフォー映画の典型的なヒロインたち(キカ・マーカム演じる姉アンがまさにそのタイプだ)とは一味違う硬質なエロティシズムを感じさせる。姉妹が暮らす海辺の斜面に建てられた家のロケーションも素晴らしかった。ここで三人が共に過ごす幸福感に満ちたシークエンスが忘れ難い。アイリスも効果的だ。暗く痛々しい映画だけれど清々しい余韻が残る。