『無法の拳銃』 ■■■□

監督:アンドレ・ド・トス

フラーの『四十挺の拳銃』が黒の西部劇なら本作は白の西部劇と言えるだろう。峻厳な雪山の孤立した町という閉鎖的空間で展開されるいびつな人間関係とサスペンス。ラッセル・ハーランの繊細なキャメラ。しかし何よりも魅力的なのは50年代ならではの倒錯性だ。西部劇の華とも言うべき馬が深く積もった雪によって限りなく停止状態に近い緩慢なアクションを余儀なくされ、ロバート・ライアンは主人公らしいアクションを遂に見せることはない(何せ最後まで発砲することなく物語に決着が付いてしまうのだ)。ちなみに最も運動感があるダンス・シーンには『荒野の決闘』のあの幸福感溢れるダンスとは正反対の不快さが画面を横溢している。俳優ではバール・アイヴスが印象的。