三鷹市芸術文化センターにて。

醜聞(スキャンダル)』(黒澤明) ■■□

キャプラの影響を強く感じさせる。志村喬の家の前にあるドブ池が良い。山口淑子の「きよしこの夜」からバーでの「蛍の光」の大合唱へと繋がる一連のシーンも良い。左卜全はやっぱり強烈だ。


『天国と地獄』(黒澤明) ■■■■

面白い、ひたすら面白い。演出のテンションが高く、物語はまったく弛緩することがない。好きなシーンは沢山あるが、今回とりわけ印象に残ったのが横浜黄金町の阿片窟シークエンス。ホラー映画的な異様な雰囲気(照明も音響もガラッと変わる)、ゾンビのように佇む麻薬中毒者たち、菅井きんのクローズアップ、ヤク中の女を眺める山崎努のサングラスに丸い光が映り込んで異形の悪魔みたいに見えるショットも不気味で良い。それと特筆すべきは人間。刑事たちといい記者たちといい町の人々といい、ワンショットしか映らないような端役でもみな本当に味のあるイイ顔をしている。


会場はほぼ満席。年配の方の比率がかなり高く7割以上だったと思う。座席は幅が狭い、座面部分が硬い、背もたれ部分が小さいという三重苦構造。30分の休憩を挟むとはいえ、4時間この椅子に座って映画を見るのはかなり苦痛だった。ちなみに席は最前列。パルテノン多摩は奥行き5mほどの舞台を挟んでスクリーンがあるので最前列での鑑賞に適しているが、三鷹市芸術文化センターは奥行きが2mあるかいないかぐらいなので最前列だとかなり首を上にあげなくてはならない。大きなスクリーンで『天国と地獄』などは凄い迫力だったが、悲しいかな快適とは程遠い状態だった。あと気になったのが映写ミス。ゴダールの映画みたいにジャンプ・カットする箇所が幾つかあった。