『時をかける少女』 ■■■■□

v-erice2006-10-05


立川シネマシティにて。

監督:細田守

12時55分上映の回、12時54分50秒頃に館内へ。観客は自分を含めて10人くらいしかいなかった。平日の昼だし雨が降っていたのでまあこんなものかなと。さて映画。期待を遥かに上回る会心の一作だった。タイムリープ(時間跳躍)による反復とズレを執拗に描くことで逆説的に「不可逆な時間のかけがえのなさ」を浮き立たせるという主題表現があざとくならずに見事なバランス感覚でまとまっている。走る、跳ぶ、転ぶ、泣く、といったアクションが何とも魅力的に描かれている。感情を揺さぶられる。尾道が舞台である大林版『時かけ』へのオマージュ(ヒロインの叔母は"あの芳山和子"なのだ!)を思わせる坂道の存在。勿論それだけではない。坂道は本作において最も劇的なことが起きる"特別な場所"なのである。山本二三の美術は圧巻の素晴らしさだし、奥寺佐渡子の巧みな脚本(彼女は『お引越し』の脚本にも携わっている)、貞本義行のキャラクターデザインも文句なし、声も予想外に良かった(新人の起用は大正解だと思う)。いや、それにしても細田守はスゴイ。やっぱりアニメは演出(コンテ)が命だということを痛感した。ところで細田守の作品には空と飛行機雲という作家の刻印があるようだ。デジモンの劇場版しかり(非常に印象的かつ象徴的なイメージとして何度も出てくる)、ワンピースの劇場版しかり(海と海賊船を真俯瞰の超ロングで捉えたオープニングがそれにあたる)。ひょっとしたら細田守は生涯の一本を作ってしまったのかもしれない、などと詰まらない心配をしたくなるほど『時をかける少女』は完成度の高い作品だった。いや、完成度云々というよりも久々に偏愛したくなるアニメ作品に出逢ったという感じだろうか。DVDの発売が今から待ち遠しい。BOX仕様のコレクターズ・エディションとか出たら買ってしまいそうだ。

時をかける少女 公式サイト