『扉の影の秘密』 ■■■

監督:フリッツ・ラング

ラングの『レベッカ』。表現主義的な演出が控え目だったのはいささか拍子抜けだったが、階段の壁に貼り付けられた無数のアンティーク仮面や歴史的殺人事件の現場を模した七つの部屋など不気味なガジェットに満ちたラムフェア邸の造形は面白い。瞠目したのはスタンリー・コルテスのキャメラで、画面を禍々しく染め上げる濃厚な闇こそがこの作品の主役と言っても良いのかもしれない。ただしジョーン・ベネットグロリア・グレアムと同じで眉毛がとても魅力的な女優だ)は白い衣服の数々を身にまとい、フィルムノワールのヒロインとしての光源を浴びて闇の中で光り輝いている*1

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盤質。画質良好。鮮度の高い黒白映像です。ただ尺は94分と実際の尺より5分短いのでPAL/NTSC変換マスターを使用しているようです(紀伊国屋レーベルにしては珍しくパッケージ裏にPALマスター使用という記述がない)。解説リーフレットは相変わらず読み応えのある内容になっています。

*1:『追跡』のテレサ・ライトのように