『東京オリンピック』 ■■■

監督:市川崑

キャメラワーク、編集、映像演出、音響処理が種目ごとに異なり、随所で市川崑の審美的センスが炸裂したりもして、国家的イベントの記録映画としてはいささか大胆すぎるのだが、そのあざといまでの映像の作り込みが、普通のドキュメンタリーとは一線を画する一個のユニークな芸術作品にしている。最大の見せ場はやはりというか最後のマラソンで、独走するアベベのクールな走りと悪戦苦闘する下位の選手たちとのコントラストが強烈だった。最後の最後で三位になってしまう円谷幸吉*1のレース後の表情や、給水所に立ち止まりジュースを何杯もお代わりする黒人選手の姿(腰に手を当ててリラックスし切っているw)も忘れ難い。ところで自転車ロードレースの場面では私が住んでいる八王子市のとある町と思しき風景が少し映し出される。40年以上も前の我が町はつげ義春の旅漫画に出てきそうなチョー鄙びた田舎であった(まあ今でも田舎なんだが)。ちなみに選手が走った高尾街道は別名オリンピック道路と呼ばれている。

*1:彼が残した遺書は日本語で書かれた最も美しい文章の一つだと思う