『OVERMAN キングゲイナー 9』

24〜26話(最終回)まで。オーバーデビル出現後の展開は明らかに詰め込みすぎなのだが、演出自体はまったく見事なものだし、脚本のテンションも高いので、それほど窮屈な感じはなかった。還暦を過ぎてなおこれだけスピーディかつパワフルな表現ができる富野由悠季の作家的バイタリティには脱帽だ。オーバーマンの設定やエクソダスの背景や社会と組織の実態がほとんど明かされないまま終わった*1のが不満と言えば不満だが、それがこの作品の欠点であるとは思えない。オーバーマンのアクション描写は素晴らしいクオリティだったし、集団による移住という言わばロードムービー的な旅モノ(モルモン教徒のエクソダスを描いたジョン・フォードの『幌馬車』のような)としての魅力、そして何よりも人間群像ドラマとして実に面白かった。エキセントリックではあるが、温かく、時に生臭いリアリティが滲み出る富野アニメのキャラクターが大好きだ。血の通ったキャラ造形というものの本当に良い見本だと思う。

*1:これらに関する情報はネット検索で補完できるだろう。コミック版やオフィシャルガイドブックを買う手もある