『かんかん虫は唄う』 ■■■□

監督:三隅研次

監督二作目とは思えない安定感のある画面造形。現代劇(歌謡映画の要素もちょっぴり入っている)だがプロットはほとんど勧善懲悪モノの時代劇だ。悪役を演じる伊沢一郎と入江たか子の憎々しさが絶品。主演はデビュー間もない頃の勝新太郎。顔も声もまるで少年のような初々しさ。三田登喜子、峰幸子、中村玉緒勝新の妹役!)の三女優も良い。ドレス姿の三田登喜子が馬車を駆るシーン、峰幸子が帽子の値札を歯で噛み切るシーン、宴席での中村玉緒のクローズアップ、いずれも強く印象に残る。最後、海上シーンでの距離を隔てた父と子の別れのカットバックは感動的だった(指輪を握る腕のアップと去り行く船を同一画面におさめたショットも素晴らしい)。