『JUNO/ジュノ』 ■■■□

監督:ジェイソン・ライトマン

ミドルティーンの少女が妊娠する話と聞くと、つい暗く悲惨な物語を想像してしまうが、本作はヒロインであるジュノの明るく前向きな性格と、彼女を支え、助けようとする家族や友人たちとの温かい絆が、カジュアルだけれど品のある演出とユーモアによって描かれていて、何かオールド・ハリウッドの20世紀フォックスの香りを感じさせる気持ちの良いホームドラマの小品になっている。ジュノ役のエレン・ペイジは『ファーゴ』のフランシス・マクドーマンドを彷彿させるユニークな妊婦ヒロインを堂々と演じていて素晴らしい。彼女の両親を演じるJ・K・シモンズとアリソン・ジャネイも実に良い。終盤、シモンズがペイジへ語りかける愛の言葉には思わず涙が出た。起承転結の"転"にあたる部分で、ジュノの運転する車が道路脇へ外れて止まろうとするその横を、貨物列車がゆっくりと滑っていく俯瞰ショットが忘れ難い。「IはHのあとにやってくる」という半村良(だったかな?)の格言を見終わった後に思い出す、そんな映画である。