『いのちの食べかた』 ■■□

監督:ニコラウス・ゲイハルタ

高度にオートメーション化された農作業や食肉加工の様子を淡々と映し出していくだけのドキュメンタリー。ナレーションや字幕(文字情報)を一切入れず、音楽や分かりやすい映像演出も使わず、キャメラが冷徹な観察者に徹するというスタイルは、恐らくフレデリック・ワイズマンを意識しているんだと思う。ただ単にワイズマン・スタイル風に仕上げているだけにしか見えないという言い方もできるのだが(ワイズマンの方法論の凄さは撮影方法と編集にあるが、本作にはその点での凄さは感じられない)。最新の施設、道具を使って行われる徹底して合理化された鶏や豚や鮭や牛の解体シーンは確かに衝撃的ではあるが、衝撃度で言ったらジョルジュ・フランジュの『獣の血』の方が遥かに強烈だった。でも翌日には何食わぬ顔して肉を頬張ってる凡庸な人間である。

いのちの食べかた [DVD]

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