『バタフライ・エフェクト』 ■■■

監督:エリック・ブレス、J・マッキー・グルーバー

いわゆるタイムトラベル物だが、いかにもサイコ・サスペンスが大好きなアメリカ人らしい作りで、逃げ場がない悪夢の迷宮を彷徨い続けるような、複雑で暗くて歪んだ質感の鬱々としたドラマ展開でありながら、派手なエフェクトとスピード感のある編集でメリハリをつけているところがハリウッド的エンターテインメントの巧妙さだ。苦渋の選択で、痙攣し鼻血を噴き出しながら過去と現在を行き交う主人公の痛々しい姿は、能天気に時間跳躍を繰り返すアニメ版『時をかける少女』の陽気なヒロインとはあまりにも対照的である。両作ともに切ない恋愛映画でもあるわけだが、爽やかな余韻を残すアニメ版『時をかける少女』とは違い『バタフライ・エフェクト』の後味が微妙なのは、やはりサイコ・サスペンスの体裁を取っているからなのだろう。それにしても残酷なハッピーエンディングだ(これしか考えられないが)。