『怪談昇り竜』 ■■■□

監督:石井輝男

"キング・オブ・カルト"石井輝男にかかると、任侠映画もたちまちバロック的色彩を帯びた畸形美の世界になってしまうのだから恐れ入る。グラン・ギニョルを思わせる見世物小屋の異様な光景(石井輝男節全開)や、阿片中毒の女郎たちが雑魚寝している部屋の鏡張りの襖(その奥には親分の閨房がある)、過剰な血糊描写などとにかくエゲつない。脇役陣も特濃級の個性派揃いで、彼らの活き活きとした痴態奇態っぷりを見ているだけで何か得体の知れない幸福感に包まれて自然と顔がほころんでしまうのだ。特に『恐怖畸形人間』をも凌ぐ土方巽の狂演は必見!(この人の「目」は本当にヤバい。この目に対抗できるのは江頭2:50ぐらいだろう。『乱』の仲代達矢などカワイイものだ)。梶芽衣子は至極まっとうな任侠のヒロインを演じており、その生真面目な硬質な美しさ故に、怪奇エログロ任侠活劇とも言うべき本作にあって、かえって際立った存在感を放っている。そんな彼女が積もりに積もった怨みを遂に爆発させ、仲間とともに敵対する組へと討ち入る場面、闇夜の土手を駆け行くロングショットの躍動感とバックに流れる「仁義子守唄」にはシビれまくり。何というカタルシス!よくぞ日本人に生まれけりだ。そして大立ち回り。背中の竜の彫り物が、仲間が身を寄せ合うと一匹の竜の姿になる。しばし切り結んでは身を寄せ合い、また一匹の竜になる。くぅぅぅカッコイイね〜。これが邦画の粋ってもんだ。更にこのあと伏線回収を兼ねた女座頭(ホキ徳田サイコー!)との一騎打ちまであるってんだから、もうこの映画どんだけサービスしてくれるんだと嬉しい悲鳴を上げたくなった。紛れもない傑作。これから60〜70年代の邦画はどんどん見なくてはいけないなあ。珍宝・奇宝がザックザクだ。

***********

盤質。画質良好。解像度、発色ともに素晴らしい。リージョン1表記だが、実際はALL仕様。特典は予告編、フォト・ギャラリー、オーディオ・コメンタリーを収録。英語字幕収録(オン・オフ可)。国内盤の発売は当分無さそう(出したくても出せない可能性大)なので興味のある方は速やかに北米盤を購入すべし!



Blind Woman's Curse

Rykodisc $19.95

DVD Fantasiumなら2,500円くらいで購入可能(日本語でのやりとり可)。