『キング・コーン 世界を作る魔法の一粒』 ■■□

監督:アーロン・ウルフ

アメリカのとうもろこし産業について大学生のイアンとカートが実際にコーン栽培を体験しながら調査していくドキュメンタリー。北米産の牛の90%はコーンをエサ(コーンを食べた牛は胃酸過多になり「酸毒症」になってしまう。そうならない為に抗生物質をエサに混ぜる。アメリカで使われる抗生物質の70%は家畜用なのだという)に短期間に無理矢理育て上げられた肥満牛で、その肉質は非常に高脂肪(飽和脂肪の含有量は牧草で育った家畜の約7倍)であり、炭酸飲料やスナックに使われている高果糖コーンシロップは肥満や糖尿病のリスクを高める甘味料である。だからファーストフードはコーンを食べているようなものらしい。コーン牛を使っているハンバーガーなど一見普通の肉に見えるがその実ほとんど脂肪の塊みたいなものなんだそうで、フライドポテトはコーン油(血液中のコレステロール値を上げる飽和脂肪酸が多く含まれる)をたっぷり使って揚げられたものだ。そして現在30歳以下のアメリカ人はこのコーン牛で育っているのである。彼らの身体に今後どのような実害が及ぶのか・・・あまりゾッとしない話だ。しかもこうなった原因は、国が行った農政改革のせいであり、コーン生産者に対する助成金や免除などの手厚いサポート体制の結果の過剰生産にあるって言うんだからなんともタチが悪い。改革を行った元農務長官の誇らしげに自分の功績を語るインタビュー映像には薄ら寒いものを感じた。アメリカ生まれのファーストフードやジャンクフードが当たり前のように食生活に溶け込んでいる日本(というかアジア圏)の若年層の成人病発症数が年々増えていることを考えると、映画の冒頭で語られていた「僕らの寿命は親の世代よりも短くなってしまうのかもしれない」という言葉は不気味なリアリティとなって心に響くのだった。

キング・コーン [DVD]

キング・コーン [DVD]