「エヴァ復活祭」第10夜

第拾九話「男の戦い」(英題:INTROJECTION)

最終回のような怒涛の展開が圧巻。全話を通じて最も盛り上がるエピソードだろう。前半はエヴァへの搭乗を拒否し、ネルフから去ろうとするシンジという第4話と同じような状況が描かれる。ただ、現状からの逃避だった前回とは違い、自らの強い意思でエヴァと訣別しようとする。シンジの迷いのない表情と言動が印象的だ。そこへ現れる最強の使徒。圧倒的な強さといい、体の配色(黒、オレンジ、白)といい、否が応でもゼットンを連想させる(笑)。大混乱の中、突然すまし顔でスイカに水をやる加持が登場し、シンジをやんわりと説得する滅茶苦茶シュールな場面を挟み、エヴァ屈指の戦闘アクションへなだれ込んでいくまでの演出リズムがたまらなく格好良い(音楽効果も抜群)。ここでシンジは前半と同じ強い意思で今度はエヴァへの搭乗を志願する。話の展開や映像の構図を第1話や 4話に似せて、それを対比させることによって主人公・碇シンジの成長の度合を強調する演出が心憎い。そして最後の初号機VS使徒。初号機の暴走シーンはどれも劇的で面白いが、この回のそれは取り分け卓抜した凄味を持っている。特にエヴァ使徒を捕食するシーンのインパクトは強烈(なにせ某格闘ゲームで必殺ワザとしてパクられたくらい笑)。英題は「取り込み」又は「摂取」を意味する精神分析用語。使徒の持つS2機関を、食べることによって取り込んだ初号機を指すと同時に、エヴァと融合してしまったシンジを暗示しているのだろう。

[我的EVA言行録]

「おれはここで水をまくことしか出来ない」by加持リョウジ
「やはり目覚めたの?…彼女が」by赤木リツコ
「まさか…信じられません!初号機のシンクロ率が400%を超えています!」by伊吹マヤ
使徒を食ってる?」by葛城ミサト


第弐拾話「心のかたち、人のかたち」(英題:WEAVING A STORY 2:oral stage)

エヴァと物理的に融合したシンジのサルベージ(救済)計画を描くハードSF設定が魅力的なエピソード。コクピットの中で「生命のスープ」と化した主人公。中盤からは液体人間シンジ(笑)の魂の葛藤が実験的な手法で延々と描かれていく。まさにエヴァらしさ全開の濃ゆい回である。第14話と16話同様、以前の映像やテロップを多用した映像コラージュが見所。特に裸のミサト、アスカ、レイが次々に現れ、「私と一つになりたいんでしょ」と語りかけてくる過激な表現などは本当に夕方放送のアニメとは思えない大胆な試みだ。ただ、このシーンはシンジの性的欲求としてのイメージの他に、彼の無意識下にある「母体回帰」の欲望を女性キャラに置き換えて象徴化している、という解釈もできると思う。これはどこか(子宮?)へ向って水の中を泳ぐシンジの映像と合わせて考えるとより一層興味深い。最後は放送当時目が点になった加持とミサトの情交シーン。露骨な描写がない代わりに音の演出がすこぶるエロい。もう一度あえて言いたい、これは夕方、子供が観る時間帯に放送されていたアニメである。英題は第14話の「物語を紡ぐ」と同じだが、oral stageという副題がついている。これはフロイトが提唱した人間の性的発達過程の最初の段階「口唇期」のこと。幼児の性的欲望(リビドー)が母親の乳首を吸う唇を中心にして満たされる時期を指す。ここでは本来的な意味ではなく、母と子の絆を根源的な欲望に重ね合わせて象徴化しているのだと思う。ちなみにエヴァには何度か赤子のシンジが母乳を飲むシーンが出てくる。またシンジがアスカに「それともママのオッパイかな〜」とからかわれるシーンがある。

[我的EVA言行録]

特になし