『なごり雪』

監督:大林宣彦

郷愁、感傷、哀愁の三重奏と、まさに大林映画の王道をゆく、切なさ120%のドラマ。相変わらず体がむず痒くなるような気恥ずかしい演出と台詞回しだけれど、観ている内にだんだん、その独特ともいえる大林ワールドに惹き込まれてしまうから不思議である。単に"ベタ"の一言では片付けられない"何か"が大林映画には存在しているようだ。ヒロインの須藤温子が素晴らしく魅力的。笑った顔と声が良い。細山田隆人も"キリッとした顔立ち、でも演技は微妙"という正統的な大林男優なのが嬉しい(笑)。ただ昔の日本映画にオマージュを捧げたという"美しい言葉の棒読み"的な言い回しはかなり違和感があった。それは何故か?多分、昔と今とでは日本人の顔が決定的に変わってしまっているからなんだと思う。時代を感じさせるデザインのサイダーがやたら美味しそうだった。